私は、本当の葉月くんをまだ知らない。


なにひとつ、わかってなんかいなかった。



「時間切れ」



時間、切れ……?


終わりを知らせるような言葉に、胸が震えた。


私は、呼吸さえ忘れて葉月くんを見る。



「探偵のくせに、時間かかりすぎってこと」


「葉月、くん……?」


「探偵ごっこはもう終わりだよ、羽澤」


「っ、」



射抜くように私を見据えた葉月くんの冷たい瞳に、何も言えるわけがなかった。


それは、これ以上、踏み込んでくるなという強い拒絶だった。


葉月くんは、一度も振り返ることなく私のそばから立ち去った。



……つい先程まで、葉月くんは隣にいたのに。


秘密を探す内に、いつしか私は葉月くんを知りたくて追いかけていた。



「どうして……」



だけど、近づくことは、どうしてこんなに難しいんだろう。