「やっぱこれ、疲れんな」



葉月くんは本来なら不必要な分厚い大きなメガネを外すと、机の上に無造作に置いた。



「なに固まってんの?」


「っ、」



くるっと振り返った素顔の葉月くんとしっかり目が合ってしまう。


だから余計に入り口から一歩も動けず。


まるで置物のようにガチガチに硬直した私を見た葉月くんは、見透かしたようにふっと笑った。



「だって……っ、緊張する」


「素直すぎ」



またしても笑みを零す葉月くんは、素顔のまま私の元までくる。



「とりあえず、着替えたら?」


「えっ……」



そう言いながら微動だに出来ずにいる私の手を引いて部屋の中へ招き入れた葉月くんは、余裕たっぷりだ。


それに比べて、ドキドキ、バクバク、私の心臓は耐えられそうにない。



こんなの観察どころではない……!


っていうか、着替えるって!?