クスッと笑った葉月くんを見て、私は思う。


やっぱり葉月くんは、優しい心を持っている。


……温かい手を持っている。


だから、陰キャ総選挙第一位だなんてレッテルを貼られたままでいいわけがない。


クラスのみんなにも、色眼鏡で見ないでほしいって思ってしまう。



「も、もう……暗くなっちゃったね……」


「送ってく」


「えっ、いいよ!悪いもん!じゃあ、私はこっちだから……」



繋いだ手が、指先から離れてしまう寸前。



「あの映画の女の呪い、まだどっか彷徨ってんの。知ってた?」


「……え!?呪い!?」


「帰り道、誰かに見られてたりして?」


「………送って頂いてもいいでしょうか」



ぷっ……と葉月くんが吹き出した。

うぅ……。

ホラー得意宣言は今後は控えようと決めた。



「最初から素直になんなよ?」



ぐぬぬ……。

結局いつも通りからかわれてるし……。



だけど、こんな風に、男の子と手を繋いで帰るのは初めてで。


今が夜でよかった。

ドキドキして、葉月くんを見れなくて、顔に出てしまってるから。



私はきっと、このとき既に、恋におちていたと思う。