* * *


一度離れた手が、再び繋がる。


後藤くん達の元を離れる時、葉月くんが私の手を強く引いたから。


とっくに陽は沈み、暗闇が辺りを包んでいた。



───“ 言った側は簡単に忘れても、言われた側はずっと忘れないってわかんないの? ”


手を引きながら前を歩く葉月くんの背中を見つめながら、その言葉を胸の中で繰り返した。


葉月くんはどうして、私の心を汲んでくれるの?


どうして、痛みをわかってくれるんだろう。


もしかしたら葉月くんも、同じように傷ついたことがあるんじゃないのかな……。


ぐっと胸に込み上げるものを堪えて、私よりずっと広いその背中に問いかけた。



「……葉月、くん?」



突然、喧騒の中を通り抜け、人気のない道に入ったと同時、ピタリとその場で足を止めた葉月くんが振り返った。



「っ、わぁ……!?」



葉月くんが繋いだままの手をグイッと自分の方へと引き寄せる。


前のめりになった身体はあっという間に私と葉月くんの間に生まれた隙間を埋めて、距離が縮んだ。