「……っ、彼氏気取りかよっ。テメェ羽澤に惚れてんだろ?ハッ……こんなとこでカッコつけてキモイんだよ!」



顔を紅潮させた救いようのないこのバカな男も、あながち勘は悪くはないのかもしれない。



「惚れてるかもね?“こんなに可愛い”羽澤が隣の席にいたら、無理もないと思わない?」


「……!!」


「気になって仕方ないくらい」



ゆっくりと、俺のメガネを大切そうに握る羽澤に目を移せば、困った顔のまま頬を赤く染めて微動だに出来ずにいる。



「意外と妬くタイプだからもう琴莉には関わらないでね、後藤くん」



押し黙る後藤の返答も待たずに、俺は羽澤の腕を掴んでその場から離れた。



自分で吐いた言葉に嘘はないと思う。


現に、入学してからの記憶のほとんどが羽澤なわけだし。


色を失くした世界が、少しずつ色づき始める。


羽澤は自分の色に染めるテロリストなんじゃないかと思うくらい。



だからズルいのは、俺じゃないよ。