「寂しいとかないよ?むしろ忙しい」



そう言って、生クリームについてしまいそうな私の髪をすっと耳にかけながら、葉月くんが笑う。



「忙しい!?それ、ホント……?」



輪郭をなぞるような葉月くんの指先にドギマギしながら。


それでも葉月くんの本心が知りたくて、少しも逸らすことなく真っ直ぐに見つめる。



「目の前にいる奴から目が離せないんだよね。これって理由になんないの?」


「……っ、」


「しかも“目離さないで”とか大胆なこと言われたら、なおさら離せないんだけど?」



真っ直ぐに、私を見つめ返した葉月くん。


プールサイドの掃除を言いつけられた時、確かにそんなようなことを言ったかもしれないけど……。


からかわれてるんだとわかってても、その優しい瞳に吸い込まれそうになる。



本当は、もっと聞きたいことも、心配している人がいるってことも、伝えたいことは山ほどあったのに。


私は、それ以上何ひとつ聞けないのだった。



葉月くんは、やっぱりズルい……。



───けれど。


素敵なところがたくさんあるんだよってクラスの人にも知ってほしい反面。


まだあと少しだけ、素顔の葉月くんを私だけの中に伏せておきたいなんて思ってしまう私がいる。


だから、私だってズルい……。