「羽澤……って、いるかな?」



昼休み。

教室のドアの前で、私のクラスを覗き込む男子がいる。



「あの、私ですけど……って!?」



そこにいる彼の姿をハッキリと見た瞬間、私も含めてクラスの女子が一斉に振り向き驚いていた。



「ちょっ!?飛鳥きゅん……!?」



日本語初心者ですか?

それくらい咲希ちゃんは混乱している。


いやでも、どうして飛鳥くんが私を!?



「今から少し話せる?」


「あの……私と?」



うん、と頷いた飛鳥くんに、みんながざわざわ騒ぎ出した。



「琴莉ってば飛鳥きゅんと知り合いだったの!?抜けがけの条例に反してるじゃない!!」


「なにそれ!?てか、違うよ……っ」



しがみついて問いただす咲希ちゃんに私はしっかり否定して、席を立ち飛鳥くんの元へ向かう。


飛鳥くんとは一度も話したこともないんだけどな……。


人気のない廊下の隅で、ピタリと飛鳥くんが足を止めた。



「いきなりで、本当にごめん」