◇◇◇◇◇

アパートがどうなっているのか気になり、優莉は買い物に出たついでに現場に行ってみようと思い立った。

昨夜、車でもあまり長時間走っていないから、そう遠くない距離だろう。スマートフォンの地図アプリでたしかめると、二キロという近さだった。
その程度なら歩いていけるだろう。アプリを頼りに足を進めた。

半分ほど歩くと見知った街並みに移り変わっていると気づく。T字路を左折してひたすら真っすぐ進めば、右手に優莉の住んでいたアパートがあるはずだ。

どうなっているのか気になって、自然と早歩きになってくる。近づくにつれ、かすかに焦げ臭い匂いが鼻をついた。

そこからしばらく歩いた優莉は、目の前に現れた光景に言葉を失くす。黄色いロープが張り巡らせられたアパートはほとんどが真っ黒に焼け落ち、かろうじて何本かの柱が残っているだけ。隣のアパートの壁も黒く煤けていた。


「ほんとになんにもなくなっちゃった……」


昨日の朝にはたしかにあったはずのものが、まったく形を変えてそこにある。なんともいえない想いが込み上げた。
お気に入りの洋服も愛用のマグカップも、全部、灰となって消えたのだ。