「なにか飲むか?」
「大丈夫です」
「それじゃ、すぐにお風呂の準備をするから入るといい」
「お、お風呂」


そう言われて全身に緊張が走る。恋人がどうとかいう話をたった今していたから、いきなり自分が壇上に上げられたような気分だ。
バッグを胸に抱えて一歩後ずさった。


「なにか妙な想像をしただろう」


ニヤッと笑う隼に「し、してません!」と首をぶんぶん横に振る。

これまで全然接点がなかったため知らなかったが、隼はちょっと意地悪だ。優莉をからかって遊んでいるようにしか思えない。


「ご要望とあらばいくらでも、なんでもするけど?」


いくらでもって? なんでもって?

いきなり〝雄〟のような態度をとられて鼓動が速まる。


「要望なんてないですっ」