仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~



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テラコッタカラーの壁にアンティークレンガをアクセントで配置し、真っ青なドアが人目を引くクールブロン自由が丘店。おしゃれな街並みに溶け込む美しい外観は、優莉の働く店である。

店内は壁全体にエイジング加工が施され、木目調のテーブルにビビットなブルーの椅子、天井から吊るされたペンダントライトも同色で統一。夜には本格的なフレンチを楽しめるが、日替わりのランチメニューであれば千五百円から食べられるスタイルは幅広い年齢層から支持されている。

かといって、食材や料理に手を抜いているわけではない。クオリティを保ちつつ気楽にフレンチを楽しんでもらおうというのが、社長である隼の考えだ。

真っ白なシャツに赤いベストのユニフォームを着た優莉はホール担当。ランチタイムを迎えて十あるテーブルは満席である。


「本日の日替わりは、豚のバスク風ローストです」


メニュー表を差し出しながら、OL風のふたり組に料理の説明も付け加える。


「しっとりと脂身まで甘い豚肉にまぶしたスパイシーなパプリカとのバランスが絶妙です」