明日美はともかく、少なくともくじ運の悪い自分は外れだろう。懸賞に当たった経験はこれまで一度もないから期待するだけ損。それなら今、目の前にあるおいしい料理を食べている方がずっといい。


「明日美は当たるといいね」
「当たるなら社長との一日デート券がいいんだけどな」
「そんなのもあるの?」


手を止めて明日美を見る。そういった景品までラインナップされているとは。


「やだなぁ、知らないの? だから女子社員たちが色めきたっているんじゃない」


明日美に言われ、周りを見た優莉は納得だった。

頬を上気させて祈るように両手を合わせる者、近くの社員と「当たったらどうしよう!」と声を弾ませる者、キラキラした目で司会者の方を見る者、女子社員全員といってもいいくらいに浮かれモードなのだ。尋常ではない。


「デート券は、一等の旅行券より断然価値があると思う」