たくさんの好奇の目にうろたえながらぎこちない笑みを浮かべた瞬間、シャッターが連続で押された。
一眼レフなどという本格的なカメラのせいか、「雑誌かなにかの撮影?」という声があがる。隼はそう思われて当然でも、優莉が相手では話にならない。隼を見てから優莉に視線が向き、「違うでしょ」と聞こえた。
雑誌には違いないが、読者は極めて狭い範囲である。
気まずい撮影をなんとか終え、ようやく奥へ足を進めていく。十メートルはあろうかと思われる大きな水槽群が並ぶ様は圧巻だ。
珊瑚の海と銘打ち、小さな熱帯魚がひらひら泳ぐ。いちいち立ち止まって水槽をじっくりと覗き込む優莉を隼はうしろからゆっくり追いかけた。
「わぁ、きれー」
誰に言うわけでもなく連呼する。優莉の目を一番引いたのはチンアナゴだ。細長い体が砂からにょろにょろと何本も出ていて、なんとも奇妙である。
これに綿帽子を被せたら宇賀のようだなと思った矢先、「花崎さん」と宇賀本人から声をかけられた。
「な、なんでしょうか」
あまり驚かせないでほしい。



