「そんなに驚かなくてもいいだろう」
「いや、ですが、そのような気配はまったく。特定の女性がいらしたんですね」


その言い方には少し語弊があるのではないか。まるであちらこちらに手を出しているよう。いったいどんなイメージを抱いているのだ。

不服そうにした隼に気づいた大久保が、「あ、いや、変な意味ではなくてですね」と慌てて訂正する。


「それでお相手は?」


興味津々に体を乗り出した。


「あぁ……それはまた改めて」


じつは優莉にプロポーズすらしていない。というのも、結婚は隼の一方的な考えに過ぎないからだ。
なにしろ優莉はまだ二十三歳。結婚を考えられるような年齢ではないだろう。プロポーズしても戸惑わせるだけだとわかっているため、どうしても躊躇する。

こんなにも弱気な自分がいるとは知らなかった。


「ですが、それならどうして私にお話を?」