「……違うの?」
「俺の恋人は優莉じゃないのか?」
今度は優莉が目をまたたかせる番だった。
「優莉さん、私、結婚してるのよ?」
「……え?」
「ソフィアの旦那様はあちらでも有名なパティシエ。彼もあとから日本に来る予定だ。彼には全店のスイーツの監修をしてもらおうと思ってね」
ソフィアは既婚者で、彼女の夫にもクールブロンの力になってもらうという。
思いがけない話を聞かされて、全身から力が抜けていく。その場にへたり込みそうになった優莉を隼が咄嗟に支えた。
「隼からあなたのお話を聞いて、きちんと紹介してもらいたくてここまでついてきたの。なんだか誤解させてしまっていたみたいでごめんなさいね」
「いえ、私こそ変なふうに勘繰ってごめんなさい」
言いがかりも甚だしく、恥ずかしくてたまらない。



