予想もしない隼の言葉に思考回路が追いつかない。
優莉の目に滲んだ涙を隼が指先で拭う。その優しい手つきをどう受け止めていいのか。
「もしかして、それを高村さんが指示していたんですか?」
ついさっき隼が高村に放った言葉を思い出したのだ。
「ご名答。さすが優莉」
「食品偽装は?」
「そのお客が認めた。ミニョンミネットで使っている食材は偽装したものだとね」
「そうだったんですか……」
あのお客が故意に異物を混入させていたのだとしたら、優莉の勘違いではなくなる。
「でも大騒ぎにしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
もしも隼が先に発見していたら、もっとスマートに処理できただろう。あの場を騒然とさせずに静かに対処できたはずだ。
「優莉はなにも悪くないよ。だから謝らないで。むしろクールブロンを守ろうとしてくれたんだから。ありがとうな」



