解放されたものの、隼のそばに行っていいものか悩み、優莉は階段の上へ駆け上がった。するとそこに騒ぎを聞きつけたのかマンションの警備員がいて、優莉を匿うようにする。
「いったいどうやって榊原を丸め込んだんだ」
「丸め込む? なにがあったか知らないが、彼がなにか高村に言ったのなら、それは彼自身が出した答えだろう」
なんの話なのか、優莉にはわからない会話が繰り広げられる。
「もう俺には従えないと言ってきた。これまでのことを公にすると。どんな手を使って榊原を口説き落としたんだ」
最初こそ冷静だった高村の声が徐々に荒々しくなっていく。
「どんな手もなにもない。ただ真摯に仕事に向き合っているだけだ」
「お前はいつもそうだ。きれいごとばかり。俺がそれでどれだけ……!」
「無理な引き抜きや食品偽装、異物混入が高村のやり方だと言うなら、お前は永遠に俺に追いつけないだろうな」
「なんだとっ、ふざけるな!」
怒りに任せて高村が隼に掴みかかる。



