「すぐに済むからおいでって」
「いや! 放して!」
繰り返す押し問答。高村が強引にその手を引いて階段を下りたときだった。
「優莉!」
思いがけず名前を呼ばれる。振り向くとそこにはキャリーバッグを手にした隼の姿があった。
「隼さん!」
ホッとしたのも束の間、隼のうしろにソフィアの姿もあり、べつの不安に襲われる。
――どうして彼女が一緒なの?
隼は険しい表情を隠しもせず、高村を睨みつけた。
「その手を放せ」
命じられるがまま、意外にも高村は優莉の腕を放した。
「ちょうどよかったよ。霧生、お前に話があったんだ」



