◇◇◇◇◇
本社に戻った優莉は、自分の犯した失態で仕事が手につかずにいた。
優莉があそこで声をかけたため店内を騒然とさせ、華々しいオープンに泥を塗ってしまった。
……どうしよう。
ノートパソコンは開いているものの、気づけばスリープ状態。画面は真っ暗だ。
「花崎さん、大丈夫よ。社長がうまく切り抜けてくれるはずだから」
心配した春香が声をかけてくる。ミルクと砂糖たっぷりのホットコーヒーをそばに置いた。
「ありがとうございます」
隼なら、あの場は上手に収めるだろう。勘違いで怒らせたお客を宥め、深く謝罪して収束させるだろう。
優莉は、うっかりミスで隼にそんな真似をさせた自分が情けなくて仕方がないのだ。
隼に乞われてフランスからやって来た、大人で知的なソフィアとの違いを思い知って胸が苦しい。
それならば仕事で挽回すればいい。頭ではそうわかっているのに動き出せない自分がもどかしかった。



