「……でもこのままだと、今度はべつの人間を使って同じような手段に出るでしょう」
たしかに、ここまで悪質な高村ならやりかねない。それならば。
「あなたがこれまでさせられたことを公にすればいい」
「えっ……内部告発、ですか」
「そうです。あなたと同じ目に遭う人間を作りたくないというのなら。榊原さん、あなたと同じようにシェフとしての誇りをもつ人間を救いたいのならそうすべきです」
このまま偽装した食材を使い続け、お客様を騙し続けるなどもってのほか。
榊原は今回の件について深く謝罪し、頼りなく目をゆらゆらと泳がせ、明言を避けたまま肩を落として店を後にした。



