そう勘繰りたくなる表情だった。ソフィアが隼を呼び捨てにしていたのも引っ掛かって仕方がない。そう疑う自分も嫌になる。

隼は優莉の方は見ず、ソフィアを手招きで呼び寄せた。


「隼、どうかしたの」


心なしかソフィアの声が弾んで聞こえる。


「ブール・ブランだけど」
「ブール・ブラン? それなら……」


温製ソースについてのふたりの会話がドアの向こうに消えていく。まるで優莉の存在を無視したかのような隼の言動だった。

ひとり取り残されて、なんともいえない寂しさが心の奥からせり上がってくる。
そこで動けずに立ち尽くしていると、門倉が現れた。優莉がなかなか戻らないから様子を見にきたのだろう。


「花崎さん、あった? ……って、どうかしたのか?」


にこやかな顔が一転、心配そうに顔を見つめる。