「すみません。失礼いたしました」


頭を下げて横を通り抜けようとした優莉はソフィアに呼び止められた。


「あなた、優莉さん?」


顔を上げると真っすぐに見下ろされ、強い眼差しに気圧されてたじろぐ。
どうして名前を知っているのだろう。隼からなにか聞いているのだろうか。
よくない言葉をかけられる気配に身をすくめ、胸を張り詰める。


「……はい、花崎優莉です」


美しいからこその迫力に怖気づいて声が震えた。ふたりの間に緊張が走り、なにを言われるのだろうと身構える。


「隼が――」
「ソフィア」


彼女がなにかを言いかけたちょうどそのとき、隼の声が厨房に続くドアからかけられた。
優莉とソフィアがそろって振り返ると、隼の顔が強張った。

彼女といると不都合でもあるの……?