今度は額にチュッと音を立てて唇が触れた。

ここが会社だという背徳感のせいなのか、鼓動の高鳴りが半端ではない。――いや、場所の問題ではなく、隼と数週間ぶりに会ったせいだ。


「疲れてないですか?」


胸を宥めすかせながら尋ねるが、目を合わせられない。有名なシェフを引き抜くという大仕事をしてきた自信か、隼が以前にも増して素敵に見えるから。


「優莉に会ったから一気に元気になった。ほら、もっとよく顔を見せて」


隼が優莉の両頬を包み込み、強制的に視線を重ねる。それでもゆらゆらと視点が定まらず、隼にクスッと笑われた。


「かわいいな、優莉は」
「かっ、かわいくないですからっ」


ただでさえ久しぶりに会ってドキドキしているのに、これ以上翻弄しないでほしい。

否定した唇にもう一度キスを落とし、ようやく解放される。隼はテーブルに置いてあったたくさんの紙袋の中からふたつ、優莉に差し出した。どちらもずっしりと重い。