今日は隼の誕生日だから何時頃帰るか聞きたかったが、それどころではなかった。彼本人も忘れているようだから、サプライズになってかえっていいかもしれない。

入れ違いで乗り込んできた人たちに聞こえないようにふぅと息を吐きだす。

隼は社内で偶然会うと、今のように隙があれば優莉に触れようとするから困ってしまう。いつ誰に見られるかとヒヤヒヤするのも少しはわかってほしいが、彼と同様にじつはうれしい気持ちがあるのも事実。隼の顔を見られるだけで、一気に元気をチャージできるのだ。

よし、がんばろう。

密かに気合を入れて、本社ビルを後にした。


今日の業者との打ち合わせは最終確認になる。数あるサンプルの中から選んだ製品の厚みやサイズ、文字の大きさなどを一からチェックしていく。
印刷したときにQRコードからきちんとサイトに飛べるかが大切。実際に作ったものでたしかめ、製作に取りかかることとなった。

打ち合わせを終えてビルを出ると見覚えのある男性と目が合い、お互いに立ち止まって会釈をする。相手も優莉を知っているようだ。

でも、どこで会った人だったか。


「この前はどうも」