物騒な話になってきた。だからクールブロンを潰すという言葉が高村の口から出たのかと納得する。


「シェフが引き抜かれてるって噂を聞いたんですけど」
「優莉の耳にも入ったのか」


つまり本当の話なのだろう。


「もしかして、さっき行ったお店に?」


それで偵察がてら食事に行ったのか。


「察しがいいね、優莉は。おそらく見た目はうちの模倣をしたけど、味だけはどうにも同じものが出せなくてシェフを引き抜きはじめたんだろう。今度オープンするシェフも同様にね」
「えっ、新しいお店からも!? もうすぐオープンなのに。大丈夫なんですか?」
「さすがにそれには焦ったけど。大丈夫、なんとかするから。今、食べてみて、ちょっと思う部分もあるから」


隼は少し考えるようにしてからそう言った。さっきの店での食事で、なにかピンとくるものでもあったのか。

なんにしてもクールブロンにとって、今は正念場。優莉もできるだけ力になりたい。せめて携わっている新規店舗のオープンだけでも。そう改めて決意した。