「前回の? それならあると思うけど見たい?」
「はい。社長から第一回目は男相手だったと聞いたので」
「あ、そうそう。そうだった」


春香は微笑みながら自分のキャビネットを漁り、「あ、これだこれこれ」と何号か前の社内報を取り出した。


「ここよ」


春香が開いたページには、眩しいくらいに真っ青な海と海パンで肩を組む隼と人事部長の大久保の姿があった。


「大久保部長とは大学時代からの付き合いらしいけど、このときは逆ナンがすごかったみたいよ」


記事でもそれに触れていて、女性に囲まれるふたりの様子も小さな写真で掲載されていた。
サメのフロートで楽しそうにする隼の体に優莉の目が釘づけになる。逞しく均整のとれた体躯は、惚れ惚れするくらいに美しい。
そして同時に、その隼に毎晩のように抱かれているのを思い返して頬が熱くなる。


「花崎さん、顔が赤いけど熱でもある?」
「あっ、いえ、大丈夫です」


心配する春香に否定して、パタッと社内報を閉じた。浮かれている場合じゃない。企画書を仕上げなければならないと、優莉は気持ちを切り替えてパソコンに向かった。