前かがみになり、優莉の顔を覗き込みながら優しく言う。
「……でも、逃がさないって」
「あれはそういう意味じゃない。優莉に俺を好きにさせるって意味だ。俺は、絶対に逃がさない。だからマンションも出て行かせない」
それならとっくに叶っている。優莉は隼を好きなのだから。
「今夜ここに泊まるのは、優莉の誕生日を祝うため。いつものように優莉の隣で寝られれば俺はそれでいい」
隼はきっぱりと言いきった。
思いがけず、愛に溢れた彼の気持ちを聞かされ、優莉の心が幸せで満ちていく。
絶対に手の届かない人だと思っていた。好きになってもらえるわけがないと諦めていた。
そんな隼からストレートに想いを伝えられているのに、自分だけ押し黙ったままでいるわけにはいかない。
「私も」
思いきって発した声がかすれる。隼は「優莉も、なに?」と聞き返した。



