部屋をしっかりと観察する余裕はないが、目の入る場所にベッドがないのを考えるとスイートルームなのだろう。洗練された調度品からもそうだと思われた。店内同様に白い壁に海辺を意識したブルー系のファブリックなど、とても爽やかでセンスがある。
「そんなに緊張するな」
そう言われて、はいそうですねと緊張を解くのは不可能。これから起こる事態を勝手に想像しているため、心臓は今にも口から飛び出しそうだ。
「なんだかものすごく悪いことをしている気分になるな」
隼は自虐するが、優莉がいつものように冗談めかして返せずにいると、「無理やり襲ったりしないから心配するな」と優莉の頭をポンと撫でた。
その言葉を聞いて、いくらか体の強張りが和らいでいく。
ソファに座った隼は隣のスペースをトンと叩いて、優莉も座らせた。
「いいか? 俺は優莉の気持ちを無視して強引にどうこうするつもりはない。これでもいい大人だ。分別はある」



