仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


「今夜はここにふたりで泊まる」
「……ここに?」


隼は立ち上がって優莉の手をとった。


「行こう」


心を優しく包み込むような優しい声だった。

マンションで同じベッドで寝るのとは訳が違う。外泊。それも海辺などというロマンチックなムードの中でときている。
隼の突然の告白で高鳴った胸は激しく脈打ち、頭と心はパニック同然。大きくうねる波に翻弄される小舟のようだった。

部屋まで予約してあったのか、支払いを済ませるとべつのスタッフが現れてふたりを奥の通路へ誘う。おとぎ話の城に出てくるようなしゃれた螺旋階段を上がり、大きな二枚扉が開かれた。

簡単に部屋の説明をしてスタッフは去ったが、優莉は入口で頼りなく瞳を揺らして立ち尽くしていた。


「優莉、おいで」


隼に手招きをされたが足が動かない。そんな優莉を見かねた隼は困ったような顔をして近づき、そっと手をとってリビングスペースへ連れていった。