隼が優しい目をしてしみじみ呟く。
「そんなことないですよ」
真由香自身も奨学金を学費に充ててがんばっているのだから、優莉も姉として応援したい。将来、おいしいスイーツを作って食べさせてもらえるのが楽しみでもある。
「だけど、宮前さんがまさか亡くなっていたなんて知らなかった」
隼が独立した際に挨拶がてらその店へ行ったそうだが、当時とは面子がガラッと変わっており、優莉の父親の消息はわからずじまいだったという。だから、てっきりべつのレストランにでも引き抜かれたのだろうと考えたそうだ。
「宮前さんとはアルバイト時代にいろんな話をしたものだよ。彼と会っていなかったら、今の俺はいない。そのくらい俺に影響を与えた人なんだ」
「そうなんですか……」
思いもしない繋がりを聞き、記憶がゆっくりと遡っていく。



