帰り際に玄関でそう言い残し、佳乃がドアを開ける。


「フォンダンショコラ、ありがとうございました。とってもおいしかったです」


早速デザートでいただいたショコラはトロッとしたチョコは甘さ控えめ。ここ最近食べた中でもトップを競うおいしさだった。


「こちらこそ中華丼ごちそうさまでした。おいしかったわ。じゃ、またね」


佳乃はひらひらと手を振り、明るく弾んだ空気を引き連れて帰っていった。

思わずふぅと肩から力を抜くと、隣で隼も同じようにする。顔を見合わせて笑うやり取りだけで胸の鼓動がトクンと跳ねた。


「手、大丈夫か?」


そう聞かれて、火傷したのを思い出す。


「忘れてました」


もともと大した火傷ではなかったのだ。そこへきて隼の母親がやって来てそれどころでなくなり、ヒリヒリした痛みはどこかへ飛んでいった。