ついその場の流れで誘ってしまったが、相手は料理研究家。優莉が作るものはプロに出すようなものではない。明日の自分用の弁当に持参しようと余分に作ってあるから、量的に問題はないとしても。
とはいえ一度誘った手前、相手の返答待ちになる。
「そうだね、母さんも食べていきなよ。優莉の手料理うまいから」
ドキドキと佳乃の答えを待っていた優莉に隼が追い打ちをかける。ハードルを上げないでほしい。
「やっ、隼さん、おいしいなんて……!」
小声で必死に否定するが、隼は「いや、うまいものはうまいよ」と訂正するつもりはないようだ。
「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらおうかしら。優莉さん、本当にいいの?」
そう尋ねられて「いえ、やっぱり遠慮してください」などと言えるわけもない。誘ったのは優莉だ。
「はい、ぜひ」



