それに呼応するかのように優莉の心臓の音も高鳴っていく。緊張がマックスまで達したそのとき、リビングに彼の母親が現れた。
「こ、こんばんは! お邪魔しております!」
相手が口を開くより早く元気いっぱい頭を下げる。ビクビクしながら頭を上げると、母親は目をまん丸に見開いていた。モスグリーンのスーツを着た上品な女性だ。
隼の年齢から考えると若くても五十代半ばだろうが、それよりずっと若々しい。パーマでふんわりさせたショートカットがよく似合う美人だ。
「あらぁ、とっても元気でかわいらしいお嬢さんね。あなたが隼のフィアンセなのね」
「えっ……」
思いも寄らない言葉が彼女の口から出てきた。
「もう、この子ったら、そんな大切な話を親にも話さないんですもの。本当に困った息子なんだから」
そう言って隣に立つ隼の腕をたしなめるように叩く。
隼から聞いたのでなければ、いったいどこから聞いてきたのだろうか。



