仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~



そう答えた声が震えていれば、緊張しているのは丸わかりだろう。でもこんな状態でリラックスできるはずもない。


「痛くないか? 少し赤くなってるな」
「大丈夫です。本当にすみません」


近くにかけてあるタオルで隼に手を優しく拭われていると、インターフォンが鳴り響いた。


「こんな時間に誰だ?」


首を傾げながら隼がモニターに向かう。


「……え、母さん?」


ポツリとつぶやいた隼のひと言に優莉の耳が敏感に反応した。

――お母さん!? 隼さんのお母さんってことだよね?

自分がここにいていいのかわからず、どこかに隠れようかとオロオロしていると、隼に「そのままでいいから」と制された。

そのままって……顔を合わせても大丈夫なの?

不安と心配に包まれているうちに再度インターフォンが鳴り、ふたり分のスリッパの音がリビングに近づいてくる。