仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


「火傷は最初が肝心だからじっとして」


うしろから抱き込まれるような体勢が優莉の鼓動を跳ね上げる。ほのかにシプレ系の香りに包まれて、その距離の近さに気が気でない。昨夜のキスが蘇るから余計だ。


「……すみません」


蛇口から流れる水音のおかげで心臓の音をカモフラージュできるからまだいいが、優莉の耳の奥ではドックンドックンと脈を打っていた。

隼が帰ってきただけで動揺して火傷なんて本当に情けない。どうしてこんなにもそそっかしいのか。もっと落ち着いてしっとりとした女性になりたいのにこれでは全然ダメだ。


「あの、おかえりなさい」


言い忘れていたと今頃になって気づいた。
ふっと笑った隼の吐息が髪にかかり、それだけで体が硬直する。


「今さら?」
「……ですね」
「なんか緊張してる?」
「いえっ、特には……」