そこから降りたのは同じくクールブロンの社員、宇賀(うが)武志(たけし)だった。総務部所属で三十歳そこそこの社内報担当だ。優莉が入社したてのとき、社内報に掲載される〝新入社員紹介〟の記事について電話でやり取りをした過去がある。

でも、どうして彼がここに。

その首には一眼レフが提げられている。ひょろっとした体形にふわっとしたパーマヘアは、茎の長いたんぽぽのよう。


「おはようございます」


丁寧に頭を下げられ、優莉もペコッと下げながら挨拶をする。


「霧生社長とのデートは、僕が取材を担当します」
「……取材、ですか?」


優莉は目をパチッとまたたかせた。


「おふたりの様子は社内報に掲載される予定ですから」
「え? 社内報? 掲載?」


なにがなんだかさっぱりだ。