「優莉にキスしたい」


思いもよらない言葉が隼の口から飛び出した。


「な、なんでですか。だって私、隼さんから見たら子どもだし、十二歳も年下なんて恋愛の対象じゃないって」


たしかそんなようなことを言っていたはず。


「だったら試そう」
「試すって――」


すべてを言い終わる前に唇を塞がれ、声が喉の奥に押し戻された。
やわらかい感触がキスによってもたらされたものだと気づき、体は再び硬直して無意識に息を止めた。思考回路は完全停止だ。

隼は優しく食むようにしてから唇を解放した。


「優莉」


甘く囁くような声が優莉の耳をくすぐる。でも、これ以上は心臓が限界だった。

ガタンと椅子を鳴らして立ち上がり、隼を押しのけてバスルームに逃げ込む。ドアを閉め、膝から力が抜けたようにその場にペタンと座り込んだ。