ところが、幼さの裏に秘められた色香に気づかされたのは一日目の朝。優莉より早く目覚めた隼は、隣で眠る彼女の寝顔に目を奪われ、艶やかな唇に吸い寄せられるように自分の唇を重ねた。無意識のキスだった。
かすかに感じた背徳感は、十二歳の年の差のせいだろうか。
自分の行為に戸惑いつつ、今度はそのかわいい寝顔を残しておきたいという欲望が顔を覗かせた。思わずスマートフォンで撮影するなんて、いったいなにをやっているのか。自分で自分のしていることがおかしくなる。
それまでは幼い子どもを相手にしているのと同じだったのに、急速に彼女の存在が愛しさに変わっていく。それが父性からくるものなのか、正直最初はわからなかった。
ところが、優莉の前だと気負わず自然体でいられる自分に気づいたのだ。一緒にいてリラックスできる女性ははじめてだった。
ひとつひとつの言動に見え隠れする幼さがかわいらしく、素直な性格からくる反応がおもしろくて、つい意地悪を言ってからかいたくなる。照れた顔や拗ねた顔を見たいからだとは、どれだけ屈折しているのか。
まさかひと回りも年下に心を惑わされるなんて、誰が想像しただろうか。
だが、優莉は当初と変わらず隼に興味の欠片もない。ひとつのベッドでぐっすりと眠れるのがなによりの証だろう。隣で隼が鬱々としているのも知らずに寝息を立てる優莉を、何度恨めしい想いで眺めているか。
柄にもなく燃え上がった気持ちは、隼自身ですら持て余すほどだった。



