頭を下げて出ていこうとした美穂を呼び止める。


「森尾さんは以前、イチゴタルトのおいしい店があるって話していたと思うんだけど」
「イチゴタルトですか? ……ええ、あります」


美穂は斜め上に目線を向けて考えるようにしてから、大きくうなずいた。


「ですが、社長は甘いものはあまりお好きではないと」
「あ、いや、俺が食べるわけじゃない」


目をまたたかせる美穂に慌てて訂正する。


「どちらかにおもたせですね」
「まぁそんなところだ。それはなんて店?」


適当に誤魔化して先を促した。


「でしたら私が買ってまいりましょうか」
「いや、仕事で必要なわけじゃないから自分で行くよ」


優莉に買って帰るものを美穂に頼むわけにはいかない。


「では、社長にその店の地図をお送りしますね」