いきなり自分の話題になり、焦って否定する。とはいえ、どこかしら褒めないわけにはいかないから、とりあえず〝かわいい〟という言葉で済ませただけだろう。


「ほんとにかわいいわよね」


コーヒーのいい香りとともに里帆がリビングへ戻ってきた。シュークリームはひとり分ずつおしゃれな皿に乗せられている。


「クールブロンで働いてるんだ」
「じゃあ、社員に手をつけたったわけか」
「秘書の里帆さんに手をつけた亮介に言われたくないな」


ふたりは社内恋愛で結ばれたようだ。秘書をつけるくらいだから、亮介は役員クラスなのだろうか。優莉がふたりを見比べていると、隼が「こう見えて亮介は大企業の社長なんだ」と教えてくれた。


「〝こう見えて〟は余計だろ」


社名を聞くと、社会人一年目の優莉でも知っている大きな会社で驚かされた。


「優莉さん、隼にうまく騙されたんじゃないか?」
「あ、いえ、そんな……」