どう答えたらいいというのか。デート自体、経験はないに等しい。

司会者が腰をかがめてニコニコと優莉の顔を覗き込む。どんな答えを期待しているのか定かではないが、キラキラした世界観を求めているのは間違いない。優莉が目を白黒させて言葉に窮していると、彼はさらにぐっと顔を近づけた。


「……楽しく過ごせたら、と思います」


体をのけ反らせて彼から離れ、なんとか答える。具体的にどうしたいかなんてわかるはずもない。
その後も投げかけられた質問に曖昧に答え、なんとかその場を切り抜けた。

うしろから薄っすらと感じる冷ややかな視線は社長である隼から発せられるものに違いないだろうが、振り返ってたしかめる勇気が優莉にはなかった。