「うん。あとはアパートの管理会社からの連絡待ちなの」
「そっか。それにしても災難だったよね。出火のときに優莉が部屋にいなくてよかった」
「もしもいたら巻き込まれていたかもしれないよね」
そう考えると本当に怖い。想像して背筋にヒヤッとしたものが走り、ブルッと身震いをした。早い時間帯のシフトでなくて助かったと言える。
「知り合いの部屋って、店まで通うのに不便なの?」
「ううん、住んでいたアパートの近くだから。どうして?」
「さっき優莉が車から降りたみたいだったから。もしかしてその人に乗せてきてもらった?」
「えっ……」
やはり見られていたらしい。運転席にいる人の顔までは見えないだろうが、どうしたって焦る。でも、ここでいつも通り駅から徒歩だというのは苦しい嘘だろう。
「あ、うん、その人もこれから出勤で、通り道だっていうから乗せてもらっちゃった」
「すごい高級車だったよね」
「そ、そうなの? 私あまり車に詳しくなくて」
なんとか誤魔化して話を進める。仲のいい明日美に真実を話せないのはつらいが仕方がない。



