仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


「では、失礼します」


会釈をした隼を真似て、優莉も頭を下げる。肩から隼の手が離れてホッとしたのも束の間、今度は手を繋がれた。

それもこれも婚約者として見せるための行為に過ぎない。そうわかっていても揺れる心はどうにも止まらなかった。

店まで送ってくれるという隼の言葉に甘え、彼の車に乗り込む。
手を繋いだ余韻で心臓は早鐘のまま。その音が静かな車内で彼に聞こえるのではないかとハラハラした。

店の前で降りるわけにはいかないため、少し離れた場所で車を降りる。うしろから明日美に「おはよう」と声をかけられたときには心臓を撃ち抜かれるほどに驚いた。


「おはよ」


今の、見られてないよね?

ドキドキしながら明日美の顔を見る。


「今日は仕事に来て大丈夫なの?」


どうやら見られていないようだ。小さく深呼吸をして胸を撫で下ろす。
小走りにやって来た明日美と並んで歩きだした。