引継ぎがきちんとされているらしく、彼女がにこやかに返す。
「彼女を紹介させてください」
そう言って隼が優莉に振り返る。「優莉、おいで」と手招きをして呼び寄せた。
「こちらが私の婚約者です」
肩を引き寄せられ、単なる〝ふり〟だとわかっていても鼓動が弾む。しかも不意打ちで呼び捨てだ。
「は、花崎優莉と申します。よろしくお願いします」
ぎこちなく頭を下げ、なんとか大人ぶった笑みを浮かべた。
「こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。なにかございましたらなんなりとお申しつけくださいませ、花崎様」
ロボットのような優莉とは比べ物にならないくらいの優雅な微笑みとお辞儀だった。



