これほど多くの人から注目されるのは人生初。あまりにも緊張して、途中なにもないのに躓きそうになりクスクス笑われた。情けない。

ステージに上がると四方八方からライトを浴び、会場内の熱気と相まって、冬だというのに暑い。逆光で社員たちの顔が見えないのはとても助かった。


「花崎さん、おめでとうございます! こちらが見事ゲットされました、霧生社長との一日デート券です!」
「ありがとう、ございます……」


ひと昔前のクイズ番組で使われそうな大きなパネルには〝霧生社長とのドキドキ!? 一日デート券〟と、ハートマークのロゴ入りで描かれている。大きさの割には軽いが、明日美ならきっと〝価値に換算したら相当な重さだよ〟と言うだろう。


「全女子社員の羨望の眼差しが向けられていますが、今のお気持ちはいかがでしょうか?」
「えっと、はい……光栄です」


満面の笑みでマイクを向けられてボソボソ答える。もらっても困るという正直な気持ちはぐっと飲み込んだ。


「社長とはどんなデートをしたいですか?」
「えっ? あ、そうですね……」