自分たちもその線で話を進めようというわけらしい。優莉の生活基盤に目途がついたら、そのときは婚約破棄したと届け出ればいいと。
隼がそこまで言っているのだ。優莉に断る理由はない。
「でも、どうしてそこまでしてくださるんですか?」
優莉にはありがたい話でも、隼にはなんの利点もない。
隼は待っていましたとばかりにテーブルに両腕を置いて身を乗りだした。
「じつは、ひとつ頼みたいことがあるんだ」
やはりそうきたか、というのが正直な感想だった。
なにかしら条件がなければ婚約者としてここに置いてもらえるはずがない。
でもいったいどんな頼みだろうか。
「……それは私にできることですか?」
まったく想像がつかず、なにかとても無謀な内容ではないかと恐る恐る聞く。
「俺と一緒にある人に会ってもらうだけでいい」
「ある人?」



