「行く場所がないのなら、ほかに手立てはない。それとも路上に段ボールで寝るか?」
「それは……!」
いくら倹約生活に慣れっこでも、段ボール生活は無理がありすぎる。
「それなら俺の話に乗る以外にない」
隼の言葉が優莉に追い打ちをかける。
ここを出たら、ほかに行き場はない。お金も住む場所もないでは、生きていくのすら難しい。彼を頼る以外に道がないのはたしかだった。
「……偽りとしても、私を婚約者にして本当に大丈夫なんですか?」
マンションの管理会社に対してだけとはいえ、隼になにか支障があるのではないか。それが心配だ。
「それに近々結婚なんて」
まったく予定のないでっちあげなのに。
「結婚がダメになって婚約破棄なんて話はいくらでもある」



