あちこちから「いやー!」「うそー!」といった悲鳴にも似た声があがる。羨ましさも妬ましさも混ぜこぜだ。


「花崎さん、おめでとうございます! さぁ、こちらへどうぞ!」


司会者がステージで手を大きくかざすと、人垣がサーッと退いて道ができた。まるでモーゼの十戒のよう。会場内すべての視線が優莉に向けられる。


「ほら、優莉、行かないと」
「えっ、でも!」


男子社員はさておき、出席者の中でもっともふさわしくないと言える自分でいいのか。なにしろデート券をはじめとした豪華商品よりも、おいしいものに気をとられているような女だ。プレゼントする立場の社長にも失礼ではないだろうか。

とはいえ百二十四番が優莉だと大々的に晒された以上、公然と辞退というわけにもいかない。クールブロンの社長の面目は丸つぶれ。それこそクビも免れないだろう。
ここはいったん受理して、パーティーの運営事務局に後でこっそりお願いするしかないか。

優莉は明日美にせっつかれるようにして、一身に視線を集めながらステージ上へ向かった。