背後から声が聞こえて、再び「ひゃっ」と声が出る。反動で冷蔵庫の扉を思いきり閉めた。


「俺は痴漢かなにかか」


反論の割には楽しげな声色だ。


「すぐうしろにいるとは思わなかったんです」


パッと身を翻して一歩離れる。我ながら俊敏な動きだ。

食材がないのならどうしたものか。身の回りの買い物に気を取られていたため、夕食は優莉の頭からすっかり抜けていた。


「社長、もう食事は済ませましたか?」
「いや。キミは?」
「私もまだです」
「そう思って、買ってきたぞ」


隼は優莉の脇を抜けてダイニングへ行くと、テーブルに置いてあった袋を持ち上げた。


「水族館のクラブハウスサンド」
「え!? 水族館の!?」