「遅ぇ、カナキ。授業中にナンパしてんじゃねーよ」

校庭にいる生徒のうちのひとりが、冗談まじりに叫ぶ声が聞こえる。


「してねーし」

それに対して大声を張る彼の後ろ姿と、聞こえてきた彼の名前に胸が騒ぐ。

体育の授業中の生徒たちの集団に戻った彼がサッカーボールをそのうちのひとりに渡すと、中断されていたらしいゲームが始まった。

他の生徒たちに混ざって校庭を駆け回っている彼の姿が、私には一際目立って見える。

遠目にだけれど、友達と笑いながらふざけ合っている彼の横顔が、昔見つめていて彼の横顔にリンクした。

私を見ても何の反応も示さなかった彼は、きっとただのクラスメイトだった私のことを忘れてしまっていると思う。

最後に彼とクラスメイトだったのは小学生のときで、もう5年も前のことだから。

でも私にとっての彼は、そう簡単には忘れられない人だった。

地元の幼稚園と小学校の同級生で、結構長いこと片想いし続けてた私の初恋相手。