わたしの住む藤沢の家は、母屋(おもや)と、渡り廊下で繋がっている私の部屋のある離れが中枢になる。

ほかにも藤沢の親戚さんの家が敷地内には点々としていて、父様の仕事を手伝ってくれる方の母屋への出入りも多い。

父様のご両親はもう亡くなっていて、藤沢の第一権力者は父様だ。

父様にはお兄様がいたのだけど、お兄様ももう亡い。

わたしが父様と母様の実の娘ではないとみんな知っているから、わたしは若干腫物扱いされている。

気にしないけど。

父様と母様は大事に育ててくださったし、羽咲ちゃんたちもいるし、わたしは大丈夫だ。

何よりわたしは父様と母様が大好きだ。

それだけで、生きていける。
 
……学校ではぼっちだけど。

一人とぼとぼと通学路を歩く。

さすがにコガサクくんと一緒に登校することはない。

そういえばそろそろコガサクくんとの距離をもっと縮めたいなあ。

呼び方とか変えてみてもいいかな?

脳内でうーんとうなっていると、

「お、おはよう、藤沢さん」